なぜ、教師に対して怒が湧くの? 公認心理師が原因を解説【その2】
こんにちは!公認心理師教師のシマハチです。
前回に記事では、
本当に許せない・・・なんでちゃんとしてくれないの・・・話を聞いてよ・・・
など、教師に対して湧いてくる、独特の怒りについてお話ししました。
他の人には湧かないのに、子どもの学校の教師に対しては湧いてくる独特の怒りがある。
それには「子どもの頃学校で過ごした記憶」が関係している。
教師に対する独特の怒りには、
「子どもの頃学校で過ごした記憶」が関係していました。
では、眠っているはずの記憶や当時の感情は、どんな時に表われてくるのでしょう?
今回は「子どもの頃学校で過ごした記憶」が、子どもの学校の教師への怒りに繋がる
メカニズムについて、もう少し詳しくお話していきたいと思います。
どんな時に記憶と感情の蓋が開くの?
「子どもの頃学校で過ごした記憶」を普段から意識して過ごしている人はあまりいません。
それに伴う感情もそうです。
それらは、心の奥底の方で普段は眠っています。
では、どんな時に記憶と感情の蓋が開くのでしょうか?
それは、自分の子どもが、過去の自分と同じような状況にあると感じた時です。
先生から怒られた。
友達から無視された。
昼休み一人で過ごしてる。
このような言葉を子どもから聞いた時、親サバイバーの心は
「子どもの頃学校で過ごした記憶」に一気に逆戻りします。
そして、子どもを通して、自分が子どもの頃を追体験しているような気持ちになるのです。
そうすると、記憶と感情の蓋は一気に開きます。
そして、あの当時の怒り・悲しみなどの負の感情があふれ出してくるのです。
この時あふれ出した感情は、今ではなく過去の子どもの頃の感情ですが、
それを冷静に過去の感情であると認識できる人はほとんどいません。
心の動きを見てみよう。
ではその時、心はどのような動きをするのでしょうか?
先生から怒られた。
この時の心にまず浮かぶのは、子どもの学校の教師の、情報の断片です。
お便りでは優しそうだった。
参観の時、厳しい声で子どもに話しかけていた。
しかしこれだけでは、子どもの状況を理解することはできません。
そこで次に心に浮かぶのは、
自分が「子どもの頃学校で過ごした記憶」です。
私が3年生の時の先生は、私に強く怒っていた・・・
私の話も聞いてくれなかった・・・
親の前では優しい顔をしていた・・・
だから私は親からも怒られていた・・・
このような記憶が次々と浮かんできます。
すると、そこからあふれてくる、過去の感情を味わうことになります。
教師は怖い・・・
話を聞いてくれなくて悲しい・・・
私のことを理解してくれなくて辛い・・・・
苦しい感情の追体験です。
このような状態になった人は、
自分の苦しみが、子どもが今感じている苦しみであるかのように錯覚するようになります。
私の子は、教師を怖がっている・・・
教師が話を聞いてくれなくて悲しんでいる・・・
教師に理解してもらえなくて辛い思いをしている・・・
そして、この感情と自分がもっている情報の断片とをつないで、子どもの状況を理解しようとします。
子どもの担任の先生も、話を聞かない人だ・・・
お便りの優しい言葉なんてあてにならない・・・
私の子どものことは理解してもらえていない・・・
このような心の動きで教師に対する独特の怒りの気持ちをもつようになるのです。
問題点は?
ではこのような状態になってしまった時の、問題点は何なのでしょう?
それは、
現実にある子どもの状態や気持ちを冷静に見ることができず、
子どもの心だけが置いて行かれてしまうことです。
親は、自分が追体験している過去の苦しい気持ちが、
今の子どもの気持ちであると思い込んでいます。
すると子どもが発する言葉や、得られる情報を、
「先生に対してこんな気持ちに違いない。」という先入観をもって見聞きすることになります。
前回お話ししたとおり、現実の学校の状況は親にはまったく分かりません。
だから、実際の学校での子どもの状況と違っていても、それを冷静に理解することが難しくなります。
子どもが、自分の思っていることと違うことを言った時は、
この子は、がまんしてこんなことをいっているんだ。
と思い、
教師の説明が、自分の思っていることと違った時は、
この先生は、あまりこの子のことを見ていないから、こんな言い訳をしているんだ。
と思うようになります。
こうなると、
教師は、現実に子どもが抱えている問題に比べ過剰に怒っている親を理解することができなくなります。
そして、子どもより親をなだめるだけで精一杯になってしまいます。
子どもは自分の気持ちを素直に言っても、親の気持ちにすり替えられてしまうので、本当のことが言えなくなります。
そして親が言っていることが正しいのだと、思い込もうとしたりもします。
親サバイバーの願いは「子どもに楽しく学校に行って欲しい。」
ただそれだけだったはずなのに、
過去の感情に振り回されてしまうと、いつの間にか当の子どもの心が置いてけぼりになってしまうということになるのです。
実際に、初めは子どもの問題だったのが、いつの間にか親と教師の問題になってしまい、
子どもが置いてけぼりになってしまっている場合が、学校には本当にたくさんあります。
教師に対する怒りを感じた時、どうしたらいいの?
教師にだけ感じるあの独特の怒りの気持ち、悲しい気持ち、許せない気持ちを感じた時は、自分の過去を振り返ってみましょう。
一つの指標として、
「やっぱり教師は・・。」「ほら教師は・・・。」などの言葉が浮かんできた時は、
「子どもの頃学校で過ごした記憶」から感情があふれてきている可能性が大きいです。
そんな時は、
「子どもの頃学校で過ごした記憶」から感情があふれてきているんだな。
と自分の過去を理解してあげて下さい。
怒りや悲しみの気持ちはとても大切です。
再び蓋をすると、また何かの機会にあふれてきます。
怒りや悲しみを感じた時は、
ああ、私は子どもの頃、本当は怒っていたんだな。
と、認め受け止めてあげてましょう。
そうしていくことで、当時の怒りや悲しみの気持ちは少しずつしぼんでいきます。
すると、現実に起こっている自分の子どもが抱えている問題を、
過去の気持ちと混同せずに冷静に見ることができるようになってきます。
そして、子どもの心の声をしっかりと冷静に受け止めることができるようになります。
冷静な親の心や考えは、子どもが抱える問題を解決するのにとても大きな役割を果たします。
まとめ
教師に対する独特の怒りの感情は、「子どもの頃学校で過ごした記憶」と感情の蓋が開くことによりあふれてきます。
この感情に振り回されてしまうと、
子どもの学校での幸せを願っているはずなのに、余計に上手くいかなくなってしまいます。
一番大切な子どもの心が置いてけぼりになり、親に気持ちを話せなくなってしまいます。
そうならないためにも、教師に対する独特の怒りを感じた時は、
その怒りを心の奥に閉じ込めたり、そのまま教師にぶつけたりせず、
「子どもの頃学校で過ごした記憶」から感情があふれてきているんだな。
子どもの頃私はこんなに苦しかったんだな。
と理解して、その怒りを受け止めてあげましょう。
そうすることで冷静さを取り戻し、現実に起こっている問題の本当の意味での解決へと繋がっていく行動を取ることができるようになります。
この記事がみなさんのお役に立てたらうれしいです。
学校での悩みを抱えている方は、ぜひまたここに来て、一緒に解決していきましょう!